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現地観戦コラム

2021年ウィンブルドンとロンドン市街の様子を
現地観戦を通じてみなさまにお届けします。
(Vol.1〜Vol.7)

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Vol. 2

【テニスライター 内田暁 現地コラム】ウィンブルドンビレッジの様子と開幕迫る会場の空気感をレポート!

 2年ぶりとなる、“The Championships Wimbledon 2021”ことウィンブルドンテニスの開幕を3日後に控えた、6月25日。

 全仏オープンの開催地、フランスからの入国による“自主隔離”を経て、いよいよ、大会会場であるオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケ・クラブへと向かった。

 一週間ほど雨天と低気温が続いていたロンドンだが、この日は雨予報を覆して、雲の切れ間から青空と太陽が大胆に顔を出す。気温も20度前後で快適そのものだ。

 英国入国に伴う隔離規定を簡単に述べると、次のようなものになる。

 基本は10日間の自主隔離で、その間、入国の2日目と8日目にPCRテストを受ける(自腹です)。ただし、5日目に追加でPCRテストを受ければ(しつこいですが自腹です)、隔離期間を5日に短縮できるというシステムだ。

 ウィンブルドンは、ロンドン中心地から少し離れた郊外のため、会場周辺にホテル等はほとんどない。そこで多くの関係者が取る手段が、近郊に家やアパートを借りるか、あるいは市内から地下鉄やバスで通うか。今回、わたしが選んだのは、市内のウィークリーアパートから地下鉄で通うパターンだ。

①	フラムの街、駅までの市場の様子

   ↑滞在中のフラムの街、駅までの素敵な市場の様子

 まだ飲食店の夜間営業等に規制が設けられているロンドンだが、マスク着用の義務があるのは、屋内や公共交通機関等のみ。路上市場なども街中のいたるところで見られ、日常が戻ってきている感が強い。ウィンブルドンも、初日は観客50%からスタートし、男女の決勝戦は15000人のセンターコートを満員にする予定でいる。

建物内ではマスク着用のイギリス、電車内でも注意書きが。

   ↑建物内ではマスク着用のイギリス、電車内でも注意書きが。

 アパートを出ると、市場が並ぶ活気あふれる路地を抜けて、“チューブ”こと地下鉄に乗りいざ会場へ。ウィンブルドン会場への最寄り駅はSouthfields(サウスフィールド)駅なのだが、乗り過ごしてウィンブルドン駅に向かった。例年なら、大会が近づくにつれテニス一色に染まる街並みが、今年はどのような雰囲気なのか見たいと思ったからだ。

 そうして、ドキドキしながらウィンブルドン駅で降りると——。

 いつもなら、会場をイメージした蔦やストロベリーのデコレーションで彩られる改札口に、それらのディスプレイが見られなかった。

 観客を入れての開催とはいえ、やはり例年のようにはいかないか……。

   ↑例年より少し寂しいウィンブルドン駅

 若干落胆しつつ、駅から急こう配の坂道を上っていった。坂を上り切ったところに“ウィンブルドン・ビレッジ”と呼ばれる、瀟洒なカフェやレストラン、アンティークショップが立ち並ぶエリアがある。そこを抜け、さらに閑静な住宅エリアを10分ほど歩いた先が、遥かなるウィンブルドンだ。

 初日のために荷物が多く、ハフハフ言いながら坂を上がる。

 坂を上り切り、ビレッジに着いて顔を上げた時……途端に、視界が明るくなったような気がした。

 レストランやカフェが、文字通り、ウィンブルドンカラーに染まっていたからだ。

 カフェのテラスに、芝を模したカーペットがひかれている。

 アンティークショップのウィンドウに、ビンテージラケットが並んでいる。

   ↑ウィンブルドン・ビレッジの街の様子

 ウィンブルドン・ビレッジの人々は、テニスの到来を心待ちにしている!

 そんな気分が道々に溢れていた。

   ↑ビレッジ内の豪華な飾りつけのお店と、隣でさらに飾りつけを進めるお店の店員さん

 実はこのビレッジには、とりわけ気になっている店がある。

 それは、毎年のように訪れていたタイレストラン。しかも行けば必ず選手や関係者の姿が見え、店頭のディスプレイが凝りに凝っていることでも知られる名物店だ。

 今年もそのレストランの店頭は、にぎやかなディスプレイに彩られていた! 

 嬉しくなり、写真を撮ろうとスマートフォンを構えた時、道をあるいていた一人の男性が、撮影のじゃまをしないようにと立ち止まった。

 「どうぞ、先に通ってください」

 そう男性に声を掛けた時、あれっと思う。ダンディなその人物こそが、このレストランのオーナーだったからだ。

   ↑ウィンブルドン・ビレッジ内のタイレストラン

 以前にお店を訪れた時、このオーナー氏からは、いろいろなお話を伺わせていただいた。

 例えば、10年以上前にふらりと店を訪れ、牛肉のチリ炒めと卵チャーハンを食べた若い女子選手の話。

 「彼女は翌日の試合に勝ったから、以降も試合前日にレストランに来ては、同じメニューを食べ続けたんだ。彼女は勝ち続け、ついには頂点へ! 当時17歳の長身のその少女こそが、マリア・シャラポワだったんだよ!」

 臨場感たっぷりに語るこのオーナー氏は、かつてBBCの人気ドラマに出演していた俳優だという。その人脈と知名度も使いながら、彼はこのビレッジのリーダー的な役割を果たしていたのだった。

    ↑ウィンブルドン・ビレッジ内のタイレストランのオーナー、エイドリアンさん

 「去年は、ひどいもんだったよ。1年で一番もりあがる時期に、何も出来なかったんだから」

 そう振り返るオーナー氏は、「だから今年は、めいっぱい盛り上げようと思ったんだ!」と表情を輝かせる。偶然の再会に嬉しくなり、「必ず食べに来るから」と約束して、足取りも軽くウィンブルドン会場へと向かった。

 取材パスの受け渡しやセキュリティチェックなどは、思った以上に簡単に済んだ。

 会場に足を踏み入れると、コートは選手やトレーナーたちに満たされていて、早くも活気に満ちている。

   ↑会場内のドローパネル。ドロー発表後パネルにスタッフが対戦カードを手で貼り付けていく。

 先の全仏オープンを制したノバク・ジョコビッチが、次代の王者候補のヤニク・シナーと打ち合っている。

 コーチの綿密なチェックを受けながら、実戦さながらの練習試合を戦う日比野菜緒の姿もある。

 それら豪華な光景の中で、ひときわ多くのギャラリーを集めるコートがあった。

 人をかき分けるようにしてのぞき込むと、そこにいたのは、ロジャー・フェデラー。さらには、相手は誰かと首を伸ばすと、ネットの向こうに居たのは、アンディ・マレーだった。

   ↑会場で練習をするアンディ・マレー選手(手前)とロジャー・フェデラー選手(奥)

 フェデラーは、自身が課題としているチェックポイントがあるのか、ボールを打っては、しばし首を傾げた。

 マレーはサーブを打ち込むたびに、「今のは良いタイミングだったぞ」「もっと集中しろ、アンディ!」と、自己評価を下していく。

   ↑コーチと話をするアンディ・マレー選手

  “The Championships Wimbledon 2021”の開幕に向け、町は華やぎを増し、選手は心身を研ぎ澄ます——。

 それが、2年ぶりの開催を3日後に控えた、ウィンブルドンの景色だった。

内田暁

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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